【空室対策のプロ】リーシングマネジメントの仕事、キャリア、市場動向を徹底解説

「単なる仲介業務から脱却し、不動産収益最大化のための戦略立案に携わりたい」
「市場の空室率が深刻化する中で、オーナーの資産価値を守るスペシャリストになりたい」

現在、不動産仲介の現場や賃貸管理業務で経験を積んだプロフェッショナルの方々にとって、「リーシングマネジメント」は、まさにその専門性と市場価値を大きく高める、次なるキャリアのステップとなります。

リーシングの仕事は、単に「空室を埋める」だけではありません。市場の二極化、ESG対応、そしてフレキシブルオフィスの台頭といった複合的なトレンドを分析し、**不動産空室対策**を戦略的に実行する、オーナーにとって最も重要な「攻め」の業務です。

この記事では、リーシングマネジメントの専門家として成功するために必要な知識、最新の市場データ、そしてキャリアパスを、公的機関や調査レポートに基づき詳細に解説します。


リーシングマネジメント(LM)の価値と専門性

不動産における「リーシング(Leasing)」とは、テナントや入居者の募集・誘致活動、賃貸借契約、更新、解約対応など、一連の管理業務を指します。(出典:ESサービス²¹)その最大の目的は、ビルオーナーの収益を確保するため、不動産の**空室を埋める**ことです。

「リーシングマネジメント」の定義と役割

リーシングマネジメント(LM)は、単なる客付け(仲介)ではありません。市場調査に基づき、どのようなテナントを誘致すべきかという戦略の立案、誘致のための資料作成、仲介会社への情報展開、契約条件の交渉、さらには入居後のフォローアップまでを含む、より広範で戦略的なプロセス全体を指します。(出典:Officetar²)

LMは、不動産の資産価値を維持・向上させるプロパティマネジメント(PM)業務のなかでも、特に収益性を直接的に確保する「攻めの側面」に特化した、専門性の高い職務です。LMは、貸主(オーナー)側の代理人として、オーナーの利益最大化のために行動します。(出典:JLL⁶)

関連用語との役割分担

リーシングの専門性を明確にするため、類似の業務との違いを整理します。

用語 主な役割 視点/活動の性質
**リーシングマネジメント (LM)** テナント誘致戦略の立案・実行、契約条件交渉 オーナーの収益最大化のための「戦略的・能動的な活動」
プロパティマネジメント (PM) 不動産資産の運営管理全般(清掃、修繕計画、賃料回収など) 資産価値の維持・保全のための「管理的な活動」
仲介 貸主と借主のマッチング、契約書類の作成、斡旋 宅建業法に基づき、契約成立を目的とする「取引的な活動」
テナントレップ テナント(借主)側の代理人として物件探索、条件交渉 借主の利益を最大化するための「戦略的な代理活動」

市場の変化(テレワーク普及、フレキシブルオフィスの成長)により、単に仲介会社に依頼する受動的な姿勢では空室は埋まりません。そのため、市場動向を分析し、競合と差別化するLMの専門性が今、強く求められています。(出典:ザイマックス総研⁷)


仕事内容と戦略:優良テナント誘致の実践事例

リーシングマネジメントの仕事は、市場分析、戦略立案、実行、そして入居後の管理まで多岐にわたります。ここでは、主要なプレイヤーが実践する具体的な戦略を紹介します。

リーシング戦略の3つのモデル

市場では、オーナーの利益を最大化するため、主に以下のような戦略的アプローチが取られています。

  1. **総合力・エコシステム型(例:サンフロンティア不動産)**

    テナント誘致(リーシング)に留まらず、賃貸保証サービスの提供、入居中のビルメンテナンス、移転時のトータルマネジメントまでをグループ内で一貫してサポートする体制を構築しています。(出典:サンフロンティア不動産⁵)オーナーとテナント双方をエコシステム内に取り込み、顧客生涯価値(LTV)を最大化する戦略です。

  2. **オーナー利益特化・非相反型(例:アートアベニュー)**

    自社で仲介店舗を持たず、仲介手数料収益を優先する「利益相反」のリスクを徹底的に排除します。(出典:アートアベニュー¹⁷)首都圏約10,000店舗の仲介会社ネットワークに対し、空室情報を惜しみなく全面解禁することで、情報露出を最大化し、**空室期間を短縮**する成果を追求します。

  3. **付加価値・差別化型(例:JOY株式会社)**

    空室期間中にオフィス内に家具やインテリアを戦略的に設置する「オフィスステージング」を提供します。(出典:東京新聞¹⁸)これにより、殺風景な空室では伝わりにくい「ここで働くイメージ」を内見者に具体的に想起させ、反響率と成約率を向上させる、特に築年数が経過したビルに有効な差別化戦術です。

LM担当者に求められる実行スキル

  • **チャネル戦略の最適化:** REINS、自社ポータルサイト、ポータルサイトといった伝統的チャネルとデジタルチャネルを、物件の特性やターゲットに応じて最適に組み合わせ、情報を流通させる能力。(出典:ESサービス²¹)
  • **テナントミックスの設計:** 商業施設だけでなくオフィスでも、ビル全体の利便性を高めるため、低層階に保育所やクリニックなどを誘致し、上層階のオフィスフロアのリーシングを容易にする戦略を設計する能力。(出典:加藤寛之²⁴)
  • **データ駆動型の業務遂行:** テナント候補、仲介会社、契約交渉履歴などの膨大な情報をProptechツール(例:NECの「テナントリーシング」¹⁹)を活用し、属人的ではなく組織的・一元的に管理する能力。

市場動向と将来性:二極化・フレキシブルオフィスへの対応

リーシング戦略を立案する上で、オフィス市場の現状、特にその「二極化」の構造をデータで把握することは不可欠です。

オフィス市場の二極化と回復基調(2025年Q2データ)

最新の市場データは、テナント需要が「高品質なビル」に集中する二極化傾向を示しています。

地域 指標 データ(時期) 動向・傾向(出典)
東京 グレードA 空室率 1.4% (2025年 Q2) 4年ぶりに2%を下回る大幅な低下。賃料は対前期比+2.7%と力強く上昇。⁹
東京 主要7区(平均) 空室率 2.82% (2025年 9月末予測) グレードAと比べて依然として一定の空室が存在。ビル競争力による二極化が継続。¹⁰
名古屋 グレードA 空室率 1.4% (2025年 Q2) 東京同様に約4年ぶりに2%を下回る。賃料は全グレードで上昇。⁹
地方10都市 賃料 10都市すべてで上昇 (2025年 Q2) 2020年Q1以来の全体的な上昇。テナント需要は全国的に底堅い。⁹

このデータは、企業が「人材確保のためのオフィス環境改善」を目的とし、快適で機能的なオフィス環境を求め、高品質なビルへの移転・集約を進めていることを示しています。(出典:CBRE¹¹)

フレキシブルオフィスの急速な成長

従来の賃貸市場の競合として、フレキシブルオフィス(コワーキングスペース、サービスオフィスなど)市場が急速に成長しています。日本国内のフレキシブルオフィス市場は、2026年には**2,000億円~2,500億円規模**に達すると予測されています。(出典:日本能率協会総合研究所¹²)

この市場は、もはや一時的な利用に留まりません。テナント企業は、「初期費用を抑えられる」点や「契約形態が柔軟である」点を評価し、フレキシブルオフィスを自社の経営戦略や財務戦略に合わせた**戦略的なスペース**として利用しています。(出典:CBRE⁸)

リーシング担当者は、フレキシブルオフィスを単なる「競合」としてではなく、自社ビルの一部を運営会社に一括貸しする、あるいは自ら運営に乗り出すなど、ポートフォリオに組み込む**新たなビジネス機会**として検討する必要があります。

ESG不動産の台頭と「対話」の重要性

テナントがビルを選ぶ上で、ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮が不可欠な要素となっています。特に「S(社会)」、すなわち安全性や快適性、ウェルビーイング(働きやすさ)への関心が高まっています。(出典:JFMA²²)

三井住友信託基礎研究所(SMTRI)は、ESGの取り組み、特に「S(社会)」分野の価値を検証し、推進するための鍵は、オーナー(またはLM担当者)とテナントとの**事業対話**であると指摘しています。(出典:SMTRI²³)入居後の継続的な対話を通じてテナントの生の声をフィードバックすることは、信頼関係を構築し、結果として**長期入居(リテンション)**につながる極めて重要な役割となります。


運営上の課題・リスクとリーシング担当者の適性

戦略的なリーシングを阻む現場の障壁と、それを乗り越えるために求められる担当者の適性を解説します。

テナント誘致の現場における3つの課題・リスク

  • **賃料設定のジレンマ:** オーナーの投資回収(設備投資やリノベーションコスト)と、市場が受容可能な賃料との間で、最適なバランスポイントを見極めるという困難な調整を担います。賃料が高すぎると空室期間が長期化するリスクがあります。(出典:ESサービス²¹)
  • **デファクト・スタンダード不在のリスク:** ESG対応が重要である一方、国内の環境認証制度(CASBEE、BELSなど)が乱立しており、「デファクト・スタンダード(事実上の標準)」が確立されていません。(出典:JBOMA²⁹)オーナーが多額のコストをかけて認証を取得しても、テナント側にその価値が伝わらなければ、リーシングで有効なアピール材料とならないリスクがあります。
  • **「利益相反」のリスク:** 外部の管理会社にリーシングを委託する際、管理会社が自社の仲介手数料収益を優先し、他社への情報公開を遅らせる(いわゆる「囲い込み」)ことで、結果的にオーナーの機会損失(空室期間の長期化)を招くリスクがあります。(出典:アートアベニュー¹⁷)

リーシングスペシャリストに求められる適性

これらの課題を乗り越え、市場で高い価値を発揮できる人材には、従来の仲介担当者とは異なる統合的なスキルセットが求められます。

  • **金融・財務的視点:** 単に契約を取るだけでなく、空室期間の賃料損失、仲介手数料、リフォーム費用、テナントリテンションによるコスト削減効果といった、すべての要素を数値化し、オーナーの**資産価値を最大化する**判断ができること。
  • **戦略的チャネル設計力:** 物件の築年数やグレード、ターゲットテナント層に応じて、最適な情報流通チャネル(REINS、ポータルサイト、DMなど)を設計できる能力。
  • **法務アドバイザリー能力:** 借地借家法に基づき、普通契約と定期契約のメリット・デメリットを正確にオーナーに助言し、資産戦略に合った契約形態を使い分ける能力。(出典:契約ウォッチ²⁶)
  • **高度な対話能力(ファシリテーション):** テナントの要望をオーナーにフィードバックし、オーナーの意図をテナントに伝える、双方向の「対話」を円滑に進めるコミュニケーション能力。

必須の法的知識:契約戦略(借地借家法)と管理業法

リーシング業務は、オーナーとテナントの権利義務を規定する複数の法律の交差点に立っています。特に、賃貸借契約の根幹である借地借家法と、管理業界の健全化を図る賃貸住宅管理業法は必須の知識です。

借地借家法に基づく契約形態の戦略的選択

リーシングのプロは、オーナーの将来の資産戦略(例:将来的な建て替え、市場変動リスクの回避)に基づき、以下の2つの契約形態を使い分けます。(出典:契約ウォッチ²⁶)

契約形態 特徴 オーナー側の戦略的利用
**普通建物賃貸借** 契約期間満了後、原則として自動更新(貸主からの更新拒絶には「正当事由」が必要)。借主保護が手厚い。 テナントに長期入居してもらい、**安定的な賃料収入**を確保したい場合に適する。ただし、テナントからの賃料減額請求は排除できない。
**定期建物賃貸借** 契約期間の満了をもって確実に終了(更新がない)。再契約は双方合意の上での新規契約扱い。 将来的な**建て替えや用途変更の計画がある**場合、または市場の賃料上昇を見据えて**柔軟性を確保したい**場合に適する。

賃貸住宅管理業法(2021年施行)のポイント

賃貸住宅の管理業務の適正化を目的としたこの法律は、リーシング業務における透明性を高めています。(出典:Docusign²⁸)

  • **誇大広告の禁止(サブリース規制):** サブリース業者に対し、「家賃保証」「空室保証」といった誤解を招く表現の禁止、契約前の重要事項説明義務が課されました。
  • **財産の分別管理義務:** 管理業者は、オーナーから預かる賃料や敷金と、自社の財産を明確に分けて管理することが義務付けられています。
  • **IT化の推進:** 契約時の重要事項説明や契約書面の交付について、オーナーの承諾があれば「電磁的方法(電子データ)」で行うことが認められており、**リーシング業務のDX化**を後押ししています。

キャリアメリット:リテンション戦略による資産価値の最大化

戦略的なリーシングマネジメントは、単なる目の前の**空室対策**ではなく、オーナーの不動産資産価値を中長期的に最大化する役割を担います。この高度な専門性は、あなたのキャリアに以下のようなメリットをもたらします。

リテンション戦略によるコスト削減と収益安定化

優れたLMは、**テナントリテンション(長期入居の維持)**を重視します。新規のリーシングには、多額の広告宣伝費、仲介手数料、内装工事費などのコストが発生しますが、既存テナントの退去率を低下させることは、これらの新規獲得コストを回避し、収益安定化に直接貢献します。

  • **ESG対話の深化:** SMTRIが指摘するように、テナントとの「対話」を深めることは、満足度を高め、信頼関係を構築し、長期入居に結びつきます。(出典:SMTRI²³)LM担当者は、この対話のキーパーソンとして機能します。
  • **空室期間の短縮:** アートアベニューの事例¹⁷のように、利益相反を避け、情報流通を最大化する戦略により、空室期間(オーナーにとっての最大の損失期間)を短縮し、賃料収入の早期確保に貢献します。

新たなビジネス機会の創出

市場の変化は、キャリアアップのチャンスです。

  • **フレキシブルオフィス市場の活用:** 成長著しいフレキシブルオフィス市場を「脅威」としてではなく、「新たな顧客層の獲得機会」と捉え、ポートフォリオへの組み込みをオーナーに提言できる能力。
  • **既存ビルの価値再定義:** 「オフィスステージング」¹⁸のような新しい手法を導入し、市場で競争劣位にある既存ビルの魅力を引き出し、競争力を回復させる「コンサルティング機能」を発揮できること。

これらの戦略を実行できるリーシングスペシャリストは、単なる営業担当ではなく、オーナーの**収益と資産価値**を直接的にコントロールする経営パートナーとしての地位を確立できます。


リーシングマネジメントに関するよくある質問(FAQ)

リーシングの専門性を高める上で、特に重要となる知識分野に関する質問をまとめました。

Q1. リーシングマネジメントに必要な専門資格は何ですか?

A. 必須資格はありませんが、宅地建物取引士(宅建士)は法的な知識の基礎として不可欠です。さらに専門性を高めるには、賃貸経営管理士や、不動産の資産価値向上を目的とするPM資格(例:ビルディング・オーナー・マネジメント協会認定資格)などが有利に働きます。

Q2. オフィス市場の「二極化」の中で、グレードB/Cビルの**空室対策**で最も重要な戦略は何ですか?

A. 単なる賃料引き下げではなく、「付加価値の創出」と「ターゲットのニッチ化」です。具体的には、オフィスステージング¹⁸による内見時の印象改善や、周辺の高品質ビルにはない柔軟な契約形態(例:短期契約、部分利用)を提案することが有効です。

Q3. 賃貸住宅管理業法の施行で、リーシング業務の何が変わりましたか?

A. 賃貸管理業者の財産分別管理が義務化され、サブリース契約における誇大広告や不適切な勧誘が禁止されました。これにより、オーナー(貸主)が保護され、リーシング業務全体のコンプライアンスと透明性が高まりました。(出典:Docusign²⁸)

Q4. オーナーから賃料減額の相談があった場合、普通契約と定期契約で対応は変わりますか?

A. 大きく変わります。普通契約の場合、特約で排除しない限り、テナントは法的に賃料減額を請求する権利を持ちます(最高裁判例)。一方、定期契約では、特約によって賃料減額請求権を**排除できる**ため、オーナーは市場変動リスクを回避しやすくなります。(出典:契約ウォッチ²⁶)

Q5. Proptech(不動産テック)は、将来的にリーシング担当者の仕事を奪いますか?

A. 奪うのではなく、「変革」させます。Proptechは、情報管理、契約書作成、仲介会社への情報流通といった**定型業務の効率化**を進めます。しかし、テナントやオーナーとの「対話」によるESG価値の検証、複雑な契約戦略の助言、市場の二極化に対応する「創造的な戦略立案」は、依然として高度な専門性を持つ人間(LM担当者)にしか行えません。(出典:NECネクサソリューションズ¹⁹)


まとめ:戦略的な空室対策への第一歩

不動産市場は、空室の二極化と、ESG・柔軟な働き方という新たな価値観の台頭により、変革期を迎えています。この環境下で「リーシングマネジメント」の専門家は、単なる営業担当者から、データ分析、法務戦略、そしてコミュニケーションを統合した**オーナーの収益最大化のための経営パートナー**へと、その役割を進化させています。

あなたが持つ仲介や賃貸管理の経験は、この戦略的業務への強固な土台となります。これからは、現場経験に「戦略的思考」と「法的な知識」を掛け合わせることが、市場価値を飛躍的に高める鍵となります。

今すぐ始めるべき第一歩

  1. **賃貸住宅管理業法の学習:** 最新の法律知識を習得し、オーナーへのコンプライアンスアドバイス能力を高めましょう。
  2. **契約形態の使い分けをマスター:** 普通契約と定期契約のメリット・デメリットを整理し、オーナーの資産戦略に合った提言ができるよう準備しましょう。
  3. **Proptechへの理解:** 業務効率化ツールや市場データ分析ツール(CBRE、JLLのレポートなど)の活用スキルを磨き、データ駆動型の**空室対策**戦略を立案できるようになりましょう。

この専門性の高い職務への挑戦は、あなたのキャリアを一段上のステージへと引き上げる確かな一歩となるはずです。

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CIW Construction 編集部

執筆者:CIW Construction 編集部

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