国土交通省や建設経済研究所の試算では、2026年度の建設投資額は80兆円を超える見通しです。公共投資と民間投資それぞれの動向を押さえておくことは、転職先の需要を見極めるうえでも役立ちます。本記事では最新の投資額データと、その背景にある政策・市場要因を整理します。
2026年度の建設投資額はどこまで伸びるか
建設経済研究所(RICE)の建設経済モデルによる見通しでは、2024年度の建設投資額は73兆2,200億円(推計)、2025年度は76兆6,700億円(前年度比+4.7%)、2026年度は80兆7,300億円(同+5.3%)とされています。出典: 建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2025年10月)。国土交通省も2025年8月時点で2025年度の投資額を75兆5,700億円(+3.2%)と公表しており、機関によって数値に幅はあるものの、いずれも増加基調にある点は共通しています。
バブル期のピークだった1992年度の84兆円と比べるとまだ届いていない水準ですが、2026年度の80兆7,300億円という数字は当時の水準に近づきつつあることを示しています。出典: 建設経済研究所。
| 年度 | 投資額(推計) | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 73兆2,200億円 | 基準年度 |
| 2025年度 | 76兆6,700億円 | +4.7% |
| 2026年度 | 80兆7,300億円 | +5.3% |
公共投資を押し上げる国土強靱化計画
2026年度の政府投資は25兆8,100億円(前年度比+9.3%)と見込まれています。出典: 建設経済研究所。背景には令和7年6月に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画があり、防災・減災に関わるインフラ整備が予算面で優先されやすい状況が続いています。老朽化した橋梁やトンネルの更新需要も重なり、土木施工管理や建設コンサルタントの求人は今後も一定の水準を保つと見られます。
民間投資は非住宅が活発、住宅は反動から回復へ
民間非住宅投資は工場・倉庫・商業施設が牽引
民間非住宅投資は前年度比+5.9%と伸びが目立ちます。出典: 建設経済研究所。工場・倉庫・商業施設の建設需要が活発で、プラント施工管理や電気設備施工管理といった職種の求人にも波及しやすい分野です。
民間住宅投資は省エネ基準義務化の反動から回復へ
民間住宅投資は2025年度が前年度比+0.9%にとどまった一方、2026年度は+4.6%まで回復する見通しです。出典: 建設経済研究所。2025年度の伸び悩みは省エネ基準の義務化を前に駆け込み需要が一巡した反動とされており、2026年度にかけて着工が戻る形になります。
投資の伸びは賃金にも波及している
建設投資額の拡大は、賃金水準にも表れ始めています。2025年春闘における建設業の平均賃上げ率は5.46%で、大手ゼネコンの初任給は2025年4月時点で大卒30万円、院卒32万円まで引き上げられました。出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」。建設業平均年収565.3万円(令和6年)は全産業平均485万円(令和5年)を上回っており、投資が増える局面では賃金面での競争力も併せて高まりやすい傾向にあります。出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」。
実務上は、投資額の伸びがそのまま個々の企業の賃上げに直結するわけではありません。ただし発注が増える分野を抱える企業ほど、人材確保のために処遇改善を先行させる動きが出やすいのは実感として理解しておきたいところです。
投資動向が転職市場に与える影響
建設投資額の増加局面では、発注が先行して人手不足が一段と表面化しやすくなります。総務省「労働力調査」を基にした国土交通省の集計でも、建設業就業者は1997年の685万人から2024年には477万人まで減少しており、投資の伸びに人材供給が追いついていない構図が続いています。出典: 総務省「労働力調査」(国土交通省作成)。投資額が伸びる分野ほど、経験者が転職市場で評価されやすくなると考えられます。
特に政府投資が牽引する土木・インフラ分野と、非住宅投資が牽引するプラント・商業施設分野は、当面求人が底堅く推移する可能性が高いと見られます。一方で住宅投資は制度変更の影響を受けやすく、着工動向によって求人数が変動しやすい点には注意が必要です。
不動産デベロッパーにも波及する投資拡大の恩恵
民間非住宅投資の伸びは、オフィスや商業施設の開発を手がける不動産デベロッパーの事業機会にも直結します。有価証券報告書ベースでは、総合デベロッパー7社の平均年収は1,051.2万円で、全国平均569万円(国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)を大きく上回ります。出典: 有価証券報告書(2025年3月期)。建設投資の拡大は施工会社だけでなく、開発・企画側の求人市場にも波及すると見ておくとよいでしょう。
求職者が投資動向をどう活用すべきか
- 政府投資が伸びる土木・インフラ更新分野の実務経験は、今後も評価されやすい
- 非住宅投資が伸びる工場・倉庫・商業施設分野は、プラントや電気設備の経験者に追い風
- 住宅投資は省エネ基準など制度変更の影響を受けやすく、動向を継続的に確認する価値がある
マクロの投資動向だけで転職先を決めるのは早計ですが、どの分野に予算が向かっているかを知っておくことで、求人が増えるタイミングを見極めやすくなります。応募先企業の主要な受注先が公共・民間のどちらに偏っているかを確認するだけでも、今後の案件の見通しは立てやすくなります。CIW Constructionでは無料の転職相談で、投資動向を踏まえた企業選びのご相談を受け付けています。分野別の求人情報も随時更新しており、実際の転職事例は転職決定実績でご覧いただけます。
まとめ
2026年度の建設投資額は80兆7,300億円と、政府投資・民間非住宅投資を中心に増加が見込まれています。一方で民間住宅投資は制度変更の影響を受けやすく、分野によって温度差がある点には注意が必要です。業界動向の詳細はコラム一覧でも随時紹介しています。