2025年春闘では建設業の賃上げ率が5.46%に達し、人手不足を背景とした処遇改善の動きが一段と鮮明になりました。賃金の水準は転職先を選ぶうえでも重要な判断材料になります。本記事では最新の賃金データと、その背景にある要因を整理したうえで、企業規模や職種による差、そして今後の給与水準の見通しまでを解説します。
2025年春闘の結果を振り返る
2025年春闘における建設業の平均賃上げ率は5.46%となりました。出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」。大手ゼネコンの初任給も、2025年4月時点で大卒30万円、院卒32万円まで引き上げられています。人手不足が続く業界だからこそ、初任給の水準は新卒採用の競争力を左右する要素として位置づけられています。
賃上げの背景にある労働時間規制
2024年4月からは罰則付きの時間外労働上限規制が建設業にも適用され、月45時間、年360時間(特別条項でも年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内)が上限となりました。出典: 国土交通省 / 厚生労働省。違反した場合は6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。2024年の年間労働時間は前年比84時間減となった一方、全産業平均と比べると依然として長い水準です。労働時間を抑えながら処遇を改善する必要があることが、賃上げ圧力のひとつになっています。
建設業の年収水準【最新データ】
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、令和6年の建設業平均年収は565.3万円で、全産業平均485万円(令和5年)を上回ります。男性平均は588.4万円、女性平均は428.7万円で、男女差の縮小は今後の課題として残っています。
企業規模・年齢による差
企業規模別では、10〜99人規模で499.3万円、100〜999人規模で約550万円、1,000人以上では736.4万円と、規模による差が大きく開いています。年齢別では20代後半461.7万円、30代前半523.9万円、30代後半566.4万円と積み上がり、50代のピーク帯では600〜700万円程度まで達します。
| 年齢 | 平均年収 |
|---|---|
| 20代後半 | 461.7万円 |
| 30代前半 | 523.9万円 |
| 30代後半 | 566.4万円 |
| 50代(ピーク帯) | 600〜700万円 |
年齢が上がるほど年収も積み上がっていく構造は他業界と共通していますが、建設業では資格の有無やマネジメント経験の広がりが、この積み上がり方をより大きくする傾向があります。同じ年齢層でも、保有資格や担当してきた工事規模によって年収に幅が出やすい点は押さえておきたいところです。
賃上げを押し上げる3つの要因
- 就業者数の減少:ピーク時685万人から2024年は477万人まで減り、企業の8割超が正社員不足を課題視
- 建設投資の拡大:2026年度の建設投資額は80兆7,300億円の見通しで、発注増が人材獲得競争を強める
- 労働時間規制への対応:2024年問題を機に、限られた時間で成果を出せる人材の処遇を優先する企業が増加
三つの要因はそれぞれ独立しているのではなく、互いに影響し合っています。発注が増えても人手が足りなければ工期に無理が生じやすく、限られた時間で成果を出せる経験者の価値はさらに高まります。処遇改善の動きは、こうした構造的な需給の変化を反映したものといえます。
職種・雇用形態による違い
賃金の上昇は一律ではなく、需要が集中する職種ほど伸びやすい傾向があります。施工管理技士や設備設計、電気主任技術者など、有資格者でなければ担えない業務ほど、企業側が処遇面で差をつけてでも確保したいと考える動きが強まっています。
職種別では一級建築士630万円、建設部門の技術士615万円、建築設計技術者約632.8万円と、専門資格を持つ層の年収は業界平均を上回ります。一方、一人親方として働く技術者は全建総連東京都連合会の調査で全年代平均597万円、常用労働者平均481万円となっており、雇用形態によっても水準に差が出ています。出典: 全建総連東京都連合会「2024年賃金調査報告書」。独立して働く場合は案件獲得力や信用面での準備が別途必要になるため、年収の数字だけで働き方を比較するのは早計です。
三つの要因が重なる分野ほど、経験者の争奪戦は激しくなりやすいと考えられます。とりわけ土木・インフラ更新に関わる職種と、プラントや電気設備といった非住宅投資に関わる職種は、当面の賃金上昇圧力が続く可能性が高い分野といえます。
2026年以降の給与水準はどうなるか
建設経済研究所の試算では、2026年度の建設投資額は80兆7,300億円(前年度比+5.3%)に達する見通しです。出典: 建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2025年10月)。政府投資は国土強靱化実施中期計画を背景に25兆8,100億円(同+9.3%)まで拡大するとみられ、公共工事を中心に受注機会が広がる見込みです。民間非住宅投資も前年度比+5.9%と伸びており、工場や倉庫、商業施設の建設需要がプラント施工管理や電気設備施工管理といった職種の求人にも波及しやすい状況です。
投資が伸びる局面では発注が先行しやすく、人材の奪い合いが処遇改善につながりやすい構図がしばらく続くと考えられます。一方で民間住宅投資は省エネ基準義務化の反動もあり、伸び方が年度によってばらつく点には注意が必要です。分野によって賃金の伸びしろに差が出る可能性も念頭に置いておくとよいでしょう。
投資が伸びやすい分野を抱える企業ほど、人材確保のために処遇改善を先行させる動きが出やすくなります。応募先企業がどの分野を主力としているかを事前に調べておくと、今後の賃金の伸びしろをある程度見立てやすくなります。
提示された年収の内訳まで確認する
求人票や内定通知に記載された年収は、基本給に加えて資格手当や住宅手当、みなし残業代などが合算されている場合があります。額面だけを比較すると、実際の手取りや残業時間あたりの単価で見たときに印象が変わることも珍しくありません。転職を検討する際は、年収の総額だけでなく内訳まで確認しておくと、入社後の認識違いを防ぎやすくなります。
賞与の算定基準や、資格取得時の手当加算の有無なども、企業によって差が出やすいポイントです。面接や条件面談の場で遠慮せず確認しておくことが、納得感のある転職につながります。
不動産デベロッパーの年収水準との違い
建設業と隣接する不動産デベロッパー業界では、さらに高い年収水準が見られます。有価証券報告書(2025年3月期)によると、総合デベロッパー7社の平均年収は1,051.2万円で、全国平均569万円(国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)を大きく上回ります。出典: 有価証券報告書(2025年3月期)。企業別ではヒューリックが2,036万円(2024年12月期)、三井不動産が1,756万円と、建設業平均565.3万円とは水準が大きく異なります。
施工管理や設計の経験を積んだうえで、企画・開発側のポジションへキャリアチェンジする技術者もいます。年収水準だけを見れば魅力的に映りますが、求められる役割や評価基準が施工現場とは異なるため、キャリアの方向性として本当に合っているかを見極めることが大切です。
求職者が賃金動向をどう活かすか
転職を検討する際は、業界平均だけでなく応募先企業の規模や主要な受注分野まで確認しておくと、提示される条件の妥当性を判断しやすくなります。CIW Constructionでは無料の転職相談で、経験や資格に見合った年収水準についてのご相談を受け付けています。取り扱っている求人の詳細は求人情報からご覧いただけます。
実際にどのような条件で転職が決まったかは転職決定実績でも紹介しています。賃金動向を把握したうえで転職活動を進めることで、条件交渉の場面でも根拠を持って話しやすくなるはずです。
転職のタイミングをどう見極めるか
賃上げの動きが続いているからといって、今すぐ動かなければ損というわけではありません。大切なのは、自分の経験やライフステージに照らして、今の会社に留まる場合と転職する場合のそれぞれで見込める処遇や働き方を比較することです。業界全体の賃金水準を知っておくことは、その比較をするための土台になります。
賃金以外の待遇にも目を向ける
年収の数字だけに注目していると、休日日数や福利厚生、資格取得支援制度といった、生活の質に直結する条件を見落としがちです。同じ年収水準でも、企業によって手当の種類や休日の取りやすさは異なります。転職先を比較する際は、年収と合わせてこうした条件も確認しておくと、入社後の満足度に差が出にくくなります。
自分の状況に置き換えて考える
平均値はあくまで全体の傾向を示すものであり、個々の経験や勤務地、企業規模によって実際の年収は上下します。転職を検討する際は、業界平均を出発点にしつつ、自分に近い条件のデータと照らし合わせて判断することが欠かせません。
賃金データを確認する際の注意点
本記事で紹介した数値は、いずれも公表時点での統計値です。年度が変わればデータは更新されるため、実際の転職活動では最新の公表資料を確認することをおすすめします。統計上の平均値と、自分が応募する企業の実態には差がある場合も多く、あくまで目安として活用することが大切です。
まとめ
2025年春闘の賃上げ率5.46%は、人手不足と建設投資の拡大という二つの要因が重なった結果といえます。企業規模や職種による差が大きい業界だからこそ、最新データを踏まえた比較検討が欠かせません。関連するデータ分析はコラム一覧でも随時更新しています。