【ダブルライセンス戦略】宅建士と管理業務主任者を同時取得するメリットと学習の進め方

不動産業界で長く評価されてきた宅地建物取引士(宅建士)に、マンション管理の専門資格である管理業務主任者を組み合わせるダブルライセンスを検討する人が増えています。試験科目の重なりが多く、学習の相乗効果が期待できる組み合わせです。本記事では両資格の違いと、同時取得のメリット・進め方を解説します。

宅地建物取引士(宅建士)とは

宅建士は、不動産の売買や賃貸の仲介における重要事項説明など、法律で定められた独占業務を担う国家資格です。不動産会社は事務所ごとに一定割合の宅建士を置くことが義務づけられており、不動産業界では基礎資格として位置づけられています。売買・賃貸のどちらの仲介会社でも役立つ汎用性の高さから、不動産業界を目指す人がまず取得を検討する資格の一つになっています。

不動産適正取引推進機構の発表によると、宅建士試験の受験者数・合格率は近年次の通りです。難易度は決して低くありませんが、独学や通信講座でも合格を狙える範囲の試験として知られています。

年度受験者数合格者数合格率
2024年度241,436人44,992人18.6%
2025年度245,462人45,821人18.7%

出典は不動産適正取引推進機構の公表資料です。合格点は2024年度が37点、2025年度が33点となっており、年度によって振れ幅があります。合格率がおおむね2割前後で推移していることから、他の国家資格と比べても計画的に学習すれば十分に合格が狙える水準といえます。

管理業務主任者とは

分譲マンションが増え続けるなかで、建物や設備を適切に維持管理していく専門人材への需要は根強く、管理業務主任者はその中核を担う資格の一つです。築年数が経過した物件が増えるほど、修繕や資産価値の維持に関わる専門知識の重要性は高まっていきます。

管理業務主任者は、マンション管理会社が管理組合に対して行う重要事項説明や管理事務報告などを担う国家資格です。マンション管理会社は事務所ごとに一定数の管理業務主任者を置く必要があり、マンションストックの増加とともに需要が底堅い資格として知られています。

宅建士が不動産の売買・賃貸の場面で活躍するのに対し、管理業務主任者はマンションという資産を長期にわたって維持管理する場面で力を発揮します。扱う対象は近いものの、業務の性格が異なるため、両方を押さえておくとキャリアの選択肢が広がります。管理組合の総会運営や大規模修繕計画への関与など、売買仲介とは異なる専門性が求められる点も特徴です。

ダブルライセンスのメリット

宅建士と管理業務主任者は試験科目の一部が重なっており、民法や区分所有法、宅建業法に関する知識は共通して問われます。先に宅建士で不動産取引の基礎を固めておくと、管理業務主任者の学習を進めやすくなる人が多いようです。

  • 不動産の売買・仲介からマンション管理まで対応できる業務の幅が広がる
  • 売買仲介会社から管理会社へ、あるいはその逆へとキャリアの選択肢が増える
  • 資格手当を両方の会社で評価してもらえる場面がある
  • 試験範囲の重なりを活かして学習効率を高められる

不動産業界全体の平均年収は569万円(国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)となっており、資格を武器に専門性の高いポジションを目指すほど、待遇面でも評価されやすくなる傾向があります。ダブルライセンスは、そうした専門性を裏づける材料の一つになります。

マンション管理士との違いに注意

管理業務主任者と名前が似た資格に、マンション管理士があります。管理業務主任者がマンション管理会社の立場で管理組合に重要事項説明などを行う資格であるのに対し、マンション管理士は管理組合側に立ち、運営や大規模修繕計画についてコンサルティングを行う立場という違いがあります。求人票やキャリアの選択肢を調べる際は、この二つの資格を混同しないよう注意が必要です。

なお、管理業務主任者とマンション管理士も試験範囲が近く、あわせて取得を目指す人も見られます。どこまで資格を広げるかは、管理会社側で働き続けたいのか、将来的に管理組合を支援する立場を目指したいのかによって変わってきます。

ダブルライセンスが求められる背景

分譲マンションのストックは長期的に積み上がっており、築年数の経過とともに大規模修繕や建て替えの検討が必要な物件も増えています。マンション管理の現場では、区分所有者間の合意形成や長期修繕計画の見直しなど、宅建士の知識だけでは対応しきれない専門的な業務が発生しやすくなっています。こうした背景から、売買仲介の知識とマンション管理の知識を両方備えた人材へのニーズは根強く続いています。

取得の進め方|どちらから受けるか

働きながら両方の資格を目指す場合、一般的には試験実施時期の早い宅建士から着手し、続けて管理業務主任者に挑戦する進め方がよく見られます。宅建士試験は例年10月、管理業務主任者試験は例年12月に実施されるため、宅建士の学習で身につけた知識を数か月以内に管理業務主任者の対策へつなげやすいのも理由の一つです。逆に、現在マンション管理会社に勤めていて管理業務主任者の知識を先に実務で使っている場合は、その理解を土台に宅建士の学習へ進む人もおり、今の仕事内容や将来の異動希望に合わせて順番を決めるのも一つの考え方です。

学習を進めるうえでの注意点

科目の重なりがあるとはいえ、管理業務主任者には管理組合の会計や建物の維持管理といった独自の出題範囲があります。共通部分の復習だけに頼らず、管理業務主任者ならではの分野にも学習時間を確保しておくことが欠かせません。あわせて、マンション管理士という関連資格も存在するため、将来的にどの範囲まで専門性を広げたいかを整理してから学習計画を立てると迷いが少なくなります。

資格取得にかかる学習時間の目安

宅建士は一般に300時間前後、管理業務主任者は宅建士の知識がある前提で100〜200時間程度の学習時間が目安とされることが多く、働きながらでも半年から1年程度の計画があれば両方の合格を狙いやすい試験といえます。ただし学習時間の感じ方には個人差があり、法律科目に馴染みがない場合はより多くの時間を見込んでおくと安心です。平日は通勤時間を使ったテキストの読み込み、休日はまとまった時間で過去問演習に充てるなど、生活スタイルに合わせて学習時間を確保する工夫が欠かせません。

モデルケースで見る学習スケジュール

  • 1〜3月:宅建士の基礎科目(民法・宅建業法)をテキストで一巡する
  • 4〜7月:宅建士の過去問演習と法改正点の確認を繰り返す
  • 8〜10月:宅建士試験の直前対策と本試験の受験
  • 11〜12月:宅建士の知識を活かして管理業務主任者の独自範囲(区分所有法・会計)を重点対策する

このように宅建士の学習が一段落したタイミングで管理業務主任者の対策に移ると、共通科目の記憶が残っているうちに学習を進められるため効率的です。逆の順番で挑戦する人もいますが、試験実施時期の関係上、宅建士から着手するほうがスケジュールを組みやすいという声が多く聞かれます。

転職・キャリアでの活かし方

不動産仲介会社では宅建士、マンション管理会社では管理業務主任者がそれぞれ評価されやすい資格ですが、両方を保有していると応募できる求人の幅そのものが広がります。たとえば仲介からマンション管理への転身や、逆に管理会社から売買仲介へのキャリアチェンジを考える際にも、資格面での説得力を持たせやすくなります。

面接では、どちらの資格をどのような目的で取得したのか、実務でどう活かしたいのかを具体的に語れるよう整理しておくと評価につながりやすくなります。CIWでは不動産業界に精通したコンサルタントが、保有資格や経験を踏まえたキャリアの方向性の整理をお手伝いしています。まずは無料相談でご自身に合った資格の活かし方を確認し、実際の求人情報もあわせてご覧ください。

求人票で見るダブルライセンスの評価のされ方

不動産業界の求人票では、宅建士は「必須」または「歓迎」として記載されることが多く、応募のハードルを下げる基礎資格として扱われています。これに対し管理業務主任者は、マンション管理会社の求人で優遇条件として明記されるケースが目立ちます。両方を保有していると、仲介系・管理系のどちらの求人にも応募しやすくなるため、転職活動における選択肢の広がりを実感しやすい組み合わせです。

配属先の面でも違いが出やすく、宅建士を活かせるのは店舗での接客・契約業務が中心の売買仲介や賃貸仲介部門、管理業務主任者を活かせるのは管理組合とのやり取りが中心のマンション管理部門です。総合デベロッパー系の企業では、両方の部門を社内で異動しながら経験できる場合もあり、ダブルライセンスを保有していると異動後の立ち上がりも早くなりやすい傾向があります。

まとめ

宅建士と管理業務主任者は試験範囲の重なりが多く、学習の相乗効果を得やすい組み合わせです。不動産の売買・仲介からマンション管理まで対応できる幅の広さは、転職やキャリアチェンジの場面で強みになります。どちらから取得を目指すか迷う場合は、今後どのような業務に携わりたいかを軸に考えてみてください。

資格取得はゴールではなく、その先のキャリアをどう描くかが本題です。今の職場で資格を活かしきれていないと感じる場合や、仲介と管理のどちらの道に進むべきか判断がつかない場合は、一人で抱え込まず、業界に詳しい第三者に相談しながら方向性を整理していくことをおすすめします。

よくある質問

宅建士と管理業務主任者はどちらから取得すべきですか

試験実施時期が早い宅建士から着手し、続けて管理業務主任者に挑戦する進め方が一般的です。宅建士の学習内容が管理業務主任者の対策にも活かせます。

働きながらでも両方の資格を取得できますか

可能です。試験科目の一部が重なっているため、限られた学習時間でも効率的に対策しやすい組み合わせとされています。

宅建士の資格だけでも不動産業界で評価されますか

はい。宅建士は不動産会社に設置義務があるため単独でも評価されますが、管理業務主任者を加えることで対応できる業務の幅がさらに広がります。

未経験からでも宅建士を目指せますか

受験資格に制限はなく、独学や通信講座で合格を目指す方も多くいます。合格率は18%前後で、計画的な学習が欠かせません。

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鈴木 南美

執筆者:鈴木 南美リーダー・シニアコンサルタント